十勝・帯広で地方創生を掲げ、次々と新事業を仕掛けてきた「株式会社そら」。2020年4月、元金融マン3人によってスタートしたその挑戦は、グランピングリゾートの運営やホテル・商業施設の事業承継、さらには起業家支援など、多岐にわたる。「十勝に人とお金を呼び込み、地域内総生産(GTP)を向上させる」──その想いを胸に突き進む彼らのもとに、新風が吹き込みます。それが、群馬県出身の加藤直樹さんと秦翔悟さん。高校の同級生だった2人が十勝で合流。その魅力と覚悟を紐解いていきます。
ふたりのルーツと“青春”ストーリー
「高校から世界へ!」自由奔放なバスケ少年──秦 翔悟さん
Q:どんな少年時代を過ごされたのですか?
秦「群馬県高崎市出身で、子どもの頃はバスケ少年でした。父が海外勤務だったこともあり、“好きなことはやってみなよ”と応援してくれる家庭でした。高校(東京農業大学第二高等学校)を卒業した後、成城大学に進み、フィリピンや台湾に留学して経営学修士を取得しました。その後は、三井住友ファイナンス&リースへ就職し、外資系IT企業や大手日系企業のIT投資促進案件を担当していました。」
Q:順風満帆なキャリアの中で、何が転機に?
秦「留学経験もあったので海外での仕事をやりたいと思っていたのですが、“本当にやりたいことって何だろう?”と疑問を抱き始めたんです。今振り返ると、地方創生に携わりたい気持ちはずっと持ちつつも、留学経験を仕事に生かそうと拘りすぎていました。そんな時に高校時代の同級生だった加藤から“十勝で地方創生に挑戦しないか”という連絡があって。即決で『やる!』って答えちゃいましたね(笑)。」
「仲間との熱い青春」と飛び込んだ金融の世界──加藤 直樹さん
Q:学生時代はどんなタイプでしたか?
加藤「前橋市生まれで、幼い頃は野球、高校ではラグビーをやっていました。高校(東京農業大学第二高等学校)時代は県大会で決勝まで進んだけれど、惜しくも花園出場はならず。その悔しさと仲間との絆はいまでも宝物ですね。大学卒業後は野村證券に入社し、最初の配属がとかち帯広営業所でした。そこで出会ったのが、当時同じ支店にいて私の指導責任者だった“そら”の社長・米田でした。」
Q:それがきっかけで“そら”へ?
加藤「当時、野村で米田を知らない人はいませんでした。『あの人は将来、野村を背負って立つ人』だと。その後、米田が十勝で起業したことも知っていましたし、米田が『オープンハウスグループ』と“そら”で新会社『かぜ』を立ち上げたときに、群馬と十勝で面白いことが起きそうと、連絡をくれたこともありました。その時はぼんやり聞いていただけでしたが、2023年10月、朝に一本の連絡がきて『来るか?そら』と。それがものすごく嬉しかったんです。3分後には『行きます』と返事していました(笑)。」
再会とシナジー──“そら”で交わるふたりの未来
「秦とは絶対面白いことができる」
加藤「今の仕事の仲間になって欲しい人を考えたときに最初に思い浮かんだのが秦だったんですよ。“コイツとなら絶対面白いことができる”っていう漠然とした確信があって。もともと高校時代に、スキー場で住み込みのアルバイトを一緒にやっていた仲なので、行動力もよく知ってましたしね」
秦「あの頃、アルバイトしていたスキー場『群馬みなかみほうだいぎスキー場(旧 宝台樹スキー場)』、実は後にオープンハウスグループが再建した場所だっていうのも驚きです。そんな不思議なご縁を感じちゃいますよね。」
「来て1週間で感じた、人のあたたかさ」
秦「十勝に来てからまだ1週間くらいなんですが、ほんとに人があたたかい。『外から来た』って言っても、『それがどうした?ウェルカム!』って空気で(笑)。ゴルフやサウナ、スキーやスノボが趣味なんですけど、十勝ってどれも最高の環境があるんですよ。食べ物も美味しいし、あっという間に虜になりそうです」
加藤「十勝の皆さんとお話していると地域に対する熱い想いを肌で感じます。例えば藤丸再建への協賛や、ふるさと納税の取り組みにしても“やるなら応援するよ”と激励をいただきます。僕はそらに入社してまだ1年ですが、まったく飽きる暇がない。刺激的な場所ですよ。」
ふたりが巻き起こす“地方創生”の新波
「今の環境に思いっきり自分の熱量を注ぎ込みたい」──秦のビジョン
秦「全国的に百貨店が閉店している中で、“そら”は帯広の老舗百貨店・藤丸再建を掲げています。これが成功すれば、地方都市の新たなモデルケースになるはず。そんなプロジェクトにチャレンジできるって、最高にワクワクしませんか?『安定』よりも『挑戦』を選ぶ自分にとって、これ以上ないフィールドです。」
「“かぜ”から得た収益を十勝に投下する──地域共創の最前線へ」──加藤の展望
加藤「今、オープンハウスグループと設立した『かぜ』では米国不動産の販売事業を展開していて、そこで得た収益を十勝の地方創生へ再投資しています。2025年夏にオープン予定の『藤丸パーク』は、藤丸の本格再建までの灯を絶やさないための拠点。ここで地域の方々の想いを一緒に盛り上げていけたら、と思っています。」
ふたりが導く“新たなそらのカタチ”
群馬出身だからこそ見える地方のポテンシャル
二人は“地元・群馬の魅力もまだまだ発信しきれていない”と感じている。だからこそ、十勝が抱える課題や可能性に“外の目線”からアプローチできるのでは、と口を揃える。
「十勝の人たちは地域への想いが強い。そこに私たちの若さや行動力、ちょっとした“よそ者”目線が加わることで、思わぬ化学反応が起こせるんじゃないか」と彼らは言う。
見え始めたシナジーの予感
- オープンハウスグループとの連携:群馬で繋がりが深く、地方創生を地で行く企業とのパイプを活かし、新たな資金・ノウハウを呼び込む。
- 藤丸再建での挑戦:単なる店舗再建にとどまらず、コミュニティ形成や新たな観光の目玉づくりなど、地域を活性化する総合プロジェクト。
- 地元企業とのコラボ:“本物”の地域リソースにふたりの発信力を掛け合わせることで、新たなファンを育てていく。
挑戦の先にある“そら”の未来
「動き出したら止まらない。何かが起こるなら賭けてみたい」──そう語る秦さん。
「3分で即決したあの日の自分を、いま誇りに思う」──と笑う加藤さん。
ふたりが、金融の世界から十勝の地に降り立った瞬間、物語は加速し始めた。地方創生の“最前線”で、新たなチャンスを次々と創り出す株式会社そら。その船出に、彼らの果敢な挑戦と行動力が、どんな未来を描き出すのか。
その先に広がるのは、まだ見ぬ“そら”の景色。
群馬生まれのふたりが加わることで生まれるシナジーは、きっと想像を超える。日本全国、そして世界へ。十勝から羽ばたくローカル×グローバルの新たな幕開けが、まさにいま始まろうとしている。

地元じゃないからこそ見える、“十勝の伸びしろ”。そして他県出身者だからこそつくれる、新たな風土と文化。僕らは、その“かぜ”を地元のみなさんと一緒に起こしたいんです。

挑戦を選ぶのは、いつだって自分の本能みたいなもの。十勝の未来に、自分の未来も重ねながら、思いっきりやってみようと思います。
編集後記
地方の可能性を信じ、挑戦する若いエネルギー。その一歩が、新しい十勝を創る大きな一歩になる──そんな予感に満ちた、二人からのメッセージでした。みなさんもこの春、彼らと一緒に新しい“そら”を見上げてみてはいかがでしょうか。
【PROFILE】
加藤 直樹 | かとう なおき
群馬県前橋市出身。1996年生まれ。武蔵大学を卒業後、野村證券入社。最初の配属地、とかち帯広営業所でそら代表の米田健史と出会う。その後、大阪の支店で2年勤務。2024年2月、株式会社そらにジョイン。現在は社長室長として社長をサポートする。
秦 翔悟 │はた しょうご
群馬県高崎市出身。1996年生まれ。東京農業大学第二高等学校(群馬県高崎市)、成城大学卒業。その後フィリピン語学留学。台湾の大学院に進学。経営学修士を取得後の2022年に三井住友ファイナンス&リース入社。2025年2月、株式会社そらにジョイン。