十勝から、スポーツによる新しい地域づくりが、静かに、そして確かな動きを見せ始めました。
これまで地域事業を積極的に支えてきた株式会社そら(代表取締役 米田 健史)と、野球の「育てる」と「続ける」を両立する仕組みづくりに挑む株式会社フィールドタイム(代表取締役 岩原 旬)。
異なる立場から「野球による地方共創」を見据えてきた2社が、このたび、資本業務提携という形で、同じ方向へ歩みをそろえることになりました。それぞれの強みを持ち寄りながら、スポーツを「持続可能な事業」へと育てていく。その新たなストーリーがいま、幕を開けようとしています。
すべてのご縁が重なった、エスコンフィールドでの一日

米田氏と岩原氏の縁を結んだのは、食品スーパーを展開する株式会社福原の福原社長でした。
「『株式会社アスリートベース十勝』の野球事業の話が進んでいて、その中で『岩原さんと会ってみてほしい』とご紹介いただいたのが始まりでした」(米田氏)
この出会いをきっかけに、岩原氏を通じてプロ野球関係者や指導者とのつながりも少しずつ広がり、自然と二人の距離も縮まっていきます。
話が大きく動いたのは2025年11月23日。エスコンフィールドで開催されたビジネスイベントを、岩原氏と米田氏が一緒に訪れた日でした。これまでの歩みを振り返りながら言葉を交わす中で、「一緒にやりますか」という一言から、資本業務提携の話が一気に現実味を帯びていきます。
そこからわずか2週間ほどで話はまとまり、12月8日、そらが株式会社フィールドタイムの株式70%を取得。正式に、フィールドタイムはそらグループの一員となりました。
フィールドタイムが目指す「育てる」と「続ける」を両立する野球のかたち

フィールドタイムは、野球を中心としたスポーツ振興事業を軸に活動しています。直近では、札幌で北海道日本ハムファイターズ・今川 優馬選手のトークショーを企画・開催するなど、プロ野球選手を交えたイベント企画も事業の一つです。
岩原氏が見据えているのは、次の世代を育てる仕組みづくりです。年末には小学生を対象とした合宿も予定。今後は、ベースボールクリニックのような形での指導事業の展開も視野に入れています。
一方で、フィールドタイムが重視しているのが「指導者が続けられる環境づくり」です。
「これまでの野球界は“手弁当”で支えられてきた部分が大きかった。情熱がある人ほど、続けられなくなる現実がありました」(岩原氏)
だからこそ、スポーツでマネタイズできる仕組みをつくり、現場の指導者に還元する。野球人口の裾野を広げながら「育てる人も、続けられる環境」をつくる。それが、フィールドタイムの目指す野球の未来です。
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経営基盤と理念を形にする力を引き上げる、そらの存在

フィールドタイムを設立したのは、2025年10月6日。会社を立ち上げてまだ2ヶ月ほどの短い期間のなかには、未来に向けた希望だけでなく、不安もあったといいます。
「野球への情熱をもとに会社はつくりましたが、正直に言うと経営面は私の課題です。『これからどう事業を運営していくか』は、大きなテーマでもありました」(岩原氏)
そうした中で決まったのが、株式会社そらへのグループ入りでした。経営面で豊富な経験を持つ米田氏と組めることは、フィールドタイムにとって大きな後押しとなったといいます。さらには、スポーツでマネタイズする構造をどう描くかといった点についても、そらの持つ知見が生かされます。
「私たちは金融の世界でずっとやってきたので、スポーツとお金が無理なく結びつく形をつくれたらいいなと考えています」(米田氏)
情熱や想いだけでは続きません。けれど仕組みさえ整えば、スポーツは「持続可能な事業」になります。その現実的な道筋を、目の前まで引き寄せられた——岩原氏は、今まさにそんな手応えを感じています。
野球に対する専門性がひらく次の構想へ——十勝へ人を呼び込む力として

フィールドタイムがグループに加わったことで、そらにとっても「野球の専門性」という、大きな軸が加わりました。
フィールドタイムが培ってきた人脈や現場感覚は、野球関係者と十勝の企業をつなぐ「採用のマッチング」や「雇用の創出」にもつながっていきます。つまり野球を通じて「十勝へ人を呼び込む」新たな流れをつくっていく取り組みです。
加えて、来年に控えるボールパーク構想においても「どんな施設が求められているのか」「どんな導線があれば選手が動きやすいのか」など、現場に根ざした視点が反映されていくことになります。
「一番大きいのは『専門家が入ること』だと思っています。野球への理解が深い人材が関わることで、事業は確実に前進していきますし、出会える人たちの層も一気に広がります」(米田氏)
フィールドタイムが加わったことで、そらが描く「スポーツを通じた地域共創」は、理念にとどまらず、仕事が生まれ、十勝に人が集まってくる――そんなビジョンの実現へと、着実に動き始めています。