インタビュー

広尾を変えた“共創の力” 官民連携でふるさと納税5,000万円を達成

「広尾町(行政) × 広尾町の企業(民間) × そら」で進めてきたふるさと納税プロジェクトが、目標額5,000万円を達成しました。7月1日に開始した「広尾の未来を、遊びと学びで育てる のびのびプロジェクト」は、9月末に目標寄附額の80%である4,000万円に到達し、11月25日に目標額を突破。12月1日時点で達成率は102.2%、支援者は651人となりました。今回のプロジェクトを含む広尾町全体のふるさと納税額は9,000万円を超え、年末には昨年比2倍に達する見通しです。

広尾町では現在、プロジェクトの三本柱である「次代を担うこどもたちの成長を支える取り組み」が本格的に動き始めています。

〈取り組み〉
① 街の中心部に、多世代が集う新たな交流型公園を整備
② 広尾高校を「通いたくなる高校」へと再構築
③ 廃校舎を活用した、林業や森林整備を学べる拠点「集(つど)いの杜」の創設

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地元企業の想いが形にした、広尾の魅力を届ける返礼品づくり

このプロジェクトを推進できた背景には、池下社長をはじめとする参加企業の「生まれ育った広尾をもっと良くしたい」「十勝の魅力をもっと広めたい」「広尾を訪れる人を増やしたい」という純粋な思いと熱意がありました。

まず取り組んだのは、返礼品ラインナップの刷新です。東は太平洋、西には日高山脈が連なる広尾町は、水産業をはじめ、農業、林業が盛んな地域です。海産物、乳製品、肉類、野菜まで幅広い食資源に恵まれているものの、その特産品はこれまで十分に活用されてきませんでした。

フィッシュミール(魚粉)・マリンオイル(魚油)の製造を中心に幅広い事業を展開する池下社長は、同業の水産加工会社だけでなく地元農家にも協力を依頼し、食の宝庫・北海道らしい多彩な返礼品ラインナップを実現。エゾバフンウニ、いくら、毛蟹、黒毛和牛のハンバーグやローストビーフ、オーガニック牛乳、地元食材を使ったアイスやチーズケーキなど、全国の寄付者にとって選びやすく魅力的な構成へと生まれ変わりました。

中でも注目を集めているのが、近年の気候変動により北海道でも水揚げが増えているマグロです。池下産業が運営する「Bay lounge」でもマグロ丼を提供しており、食を通じて地域の魅力を発信しています。広尾町の返礼品ランキングでも、天然本マグロの刺身が3位に入るなど人気を集めています。

また、池下産業をはじめとする参加企業の地道な草の根活動も、寄附拡大に大きく貢献しました。池下社長は友人や知人へ直接電話をかけ、丁寧に協力を呼びかけるなど、民間企業ならではの機動力が発揮されました。

ひたむきな取り組みが周囲を動かし、広尾の未来を共に拓く

こうした成果を受け、官民の連携は一層強まりました。これまで課題だったふるさと納税への印象が大きく変わり、町内では「本格的にふるさと納税を伸ばしていこう」という機運が高まっています。

一方、池下産業にとっても今回の取り組みは大きな転機となりました。返礼品に採用された商品の売り上げは伸び、社員も成果を実感しているといいます。同社は「広尾町、そして十勝の発展に寄与したい」という純粋な思いを胸に、地域の将来を見据えた取り組みを継続しています。

池下社長は「今回の達成はゴールではなく、ようやくスタートラインに立った段階」と語ります。今後は富裕層向け宿泊施設の誘致にも意欲を示しており、広尾・十勝に新たな経済循環を生み出す構想を描いています。

広尾町には、全国でも数少ないサーフスポットや、雄大な海と大地が共存する独自の環境など、多彩な魅力が凝縮されています。こうした地域資源と民間企業の行動力、そして地域共創を支える企業の取り組みが結びつくことで、広尾町の新たな可能性は着実に広がりつつあります。

行政だけでなく民間企業と連携して進めるプロジェクトは、そらにとっても初めての挑戦でした。その成功は大きな学びとなり、同社は今後も広尾の発展を全面的に支援していく考えです。

PROFILE

池下 藤一郎|いけした とういちろう
1982年生まれ。北海道広尾町出身。祖父が創業、父が二代目(現会長)を務める池下産業の三代目。広尾小→広尾中→帯広北高でサッカーに没頭し、帝京大学へ入学。ブラジル(高校時代)やドイツ(小学時代)の短期留学でプロの世界を体感。2005年入社、06年常務、11年10月に29歳で代表取締役社長就任。魚粉・魚油の高付加価値化、液肥輸出、社員寮を兼ねたカフェ「Bay Lounge」など新規事業を次々と展開。従業員約45名。趣味はサッカーとサーフィン。「海と山をつなぎ、広尾を世界の“サーフ&フィッシュ・タウン”へ」がビジョン。
加藤 直樹 | かとう なおき
群馬県前橋市出身。武蔵大学を卒業後、野村證券入社。最初の配属地、とかち帯広営業所でそら代表の米田健史と出会う。その後、大阪の支店で2年勤務。2024年2月、株式会社そらにジョイン。現在は社長室長として社長をサポートする。

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