インタビュー

藤丸再建への情熱と新たな挑戦 ー 米田社長が語る『藤丸サポーター制度』の意義

創業122年の地元百貨店「藤丸(2023年1月末閉店)」が本格的に再始動です。多くのファンに惜しまれながら閉店した藤丸。あれから2年弱。藤丸株式会社(村松一樹社長)立ち上げに貢献し、無理難題と言われた私的整理を成し遂げた株式会社そらの米田健史社長が、今後の藤丸再建への想いや「藤丸サポーター制度(2024年11月28日から受付開始)」について語ってくれました(取材・文 株式会社スマヒロ編集部)

新計画発表!新藤丸は2030年開業


※画像提供(藤丸株式会社)

「当初は既存建物を改修し、2025年の早期開業を目指していましたが、建築費の高騰や施設の老朽化が進行し、改修費用が1.5倍以上に膨らむと判明しました。この状況を踏まえ、既存建物の解体と新施設の建設を決断しました……。」

10月4日に開かれた藤丸株式会社の記者会見で、そう語った村松社長。

新計画では、百貨店だった現建物(帯広市西2条南8丁目)の解体工事を2025年夏に開始し、2030年頃の開業を目指します

また、記者会見では藤丸再建の道筋を示すと同時に、再建への灯火を絶やさないための仮設商業施設「藤丸パーク」を、新藤丸開業までの期間限定施設として、2025年夏にも帯広市中心部にオープンさせる予定だと発表しました。


※画像提供(藤丸株式会社)

この藤丸パークは、藤丸の灯火を消さないための施設であり、このパークを通じて地域の皆様と共に再建の意義を共有する場としたい」と株式会社そらの米田社長は説明します。

振り返れば、2022年春、米田社長が旧藤丸百貨店の藤本長章社長を始めとする関係者から相談を受けるかたちで、藤丸再建は始まりました。

当時の様子やこれまで経緯は、以下の記事をご覧ください。

倒産回避から私的整理へ苦難の道程

インタビューの冒頭、米田社長は「2022年に旧藤丸の藤本社長から相談を受けたときは、倒産の可能性が高い極めて厳しい状況で、まさに待ったなしでした。倒産すれば、従業員への退職金も払えず、テナント企業など多くの関係者に迷惑をかけたままで終わり、権利関係が複雑すぎて誰も手出しができず、その後建物は廃墟として放置されるというイメージがすぐに浮かびました」と当時を語ります。

藤丸閉店までの道のりや経緯は、新聞・ニュース等でも報道されている通りです。

株式会社そらが旧藤丸の支援に乗り出すと、倒産の危機を回避。帯広日産自動車株式会社などを展開する村松ホールディングスの村松一樹社長とともに、新たに藤丸株式会社を設立。閉店セールを開催し、2023年1月31日には多くの藤丸ファンたちに見守られながらの閉店セレモニーまでこぎ着けました。

「閉店までは、倒産を回避するためにひたすら真っすぐ走っていました。そして、閉店後は村松さんが藤丸再建計画を担い、私たちは私的整理に全力を注ぎ、金融機関、テナント、地権者の皆様と幾度となく交渉しました」(米田社長)

難題だった私的整理は2024年8月頃に完了。その間、同社は藤丸再建の資金調達面に特化するため新会社「藤丸株式会社」の株を手放します。当時、メディアに「株式会社そらが藤丸株を売却」との見出しが載ると、事情を分からない人たちからは「そらは藤丸再建から手を引いたのでは?」との憶測も一部では飛び交いました。

それでも米田社長は「私たちが引くことはできません。退職金や私的整理、藤丸株式会社の運営費など、少なくない金額を負担したこともありますが、何より帯広・十勝の街中の灯を消してはいけないと決意し、乗り出した事業です。放置してもし廃墟になっていたら、取り返しのつかない損失でした。ここまで来たからには、資金調達面の戦略について考え抜き、全面的にやりたいと思います」と明かします。


※画像提供(藤丸株式会社)

当時、株式会社そらが藤丸支援に名乗りをあげなければ、「藤丸百貨店倒産」の見出しとともにニュースが駆け巡っていたかもしれませんし、藤丸の建物(地下3階、地上8階建て)は中心街で放置され続けていたでしょう。

街中の灯は消してはいけない

※画像提供(藤丸株式会社)

2030年開業への道筋が公表され、ここからが藤丸再建の本当のスタートになるでしょう。前述の会見でも明かされた通り、当初改修案で示された30億円の費用は1.5倍以上膨らむことがわかり、早期再建を断念。

米田社長は「それでも、街中の灯は消してはいけないんです。帯広・十勝のシンボルとして愛され続けた藤丸の記憶が薄れないためにも藤丸パークの意義は大きいですし、この屋号で営業を続けることが大事なのです」と語気を強めます。

藤丸パークは、藤丸の灯火を消さないための施設であり、このパークを通じて地域の皆様と共に再建の意義を共有する場だといいます。

「藤丸サポーター制度」でオール十勝の力で再建を

帯広信用金庫はこの取り組みに共感し、藤丸のすぐ裏手にある約1,000坪の敷地を提供(借地)藤丸パークは、可動式のトレーラーハウスを常設し、十勝の食材を使った飲食店や物販店などを展開する予定です。また、定期的にマルシェやポップアップイベントが開かれるほか、ドッグランの設置や、十勝バス(帯広市)と協力して「マルシェバス」を運行する計画も進行中です。

他にも、共感・支援の輪は少しずつ広まっています。

そらと共同で新会社かぜ社を立ち上げたオープンハウスグループに続き、米田社長の古巣「野村證券」のグループ会社で、ファンづくりを得意とする株式会社ファンベースカンパニー札幌の商業施設「BiVi新さっぽろ」の企画を手掛けた上場企業の株式会社スペースなど、名だたる企業が共感・支援の輪に加わり、藤丸パークの企画・運営を支えます。

「株式会社そらとして、全力で取り組むことで、ようやく藤丸再建のスタートとなる藤丸パークまでこぎ着けました。ここからは十勝の皆様にも共感の輪を広げてほしいと願っています」と米田社長は語ります。

そこで、今後は十勝の法人・個人や、藤丸ファンに対して「藤丸サポーター」を広く募集し、再建の機運を高めていく計画だと言います。株式会社そらが「藤丸サポーター制度」を立ち上げ、共感・支援の輪を十勝全域、そして全国へと広げていきます。

米田社長は、「これまで藤丸再建のための資金調達において、支援をお願いする機会はほとんどありませんでした。しかし、今こそ皆様にサポーターとして力をお貸しいただき、新生・藤丸の再建を実現したいです」と強調しています。

株式会社そらは「十勝に人とお金を呼び込み、地域内総生産(GTP)に貢献する」理念のもとに活動してきました。米田社長は、「民間企業や地域の方々の力を結集して、新しい藤丸を創り上げたい」と述べます。

藤丸は122年の歴史を持つ、帯広の誇りとも言える存在です。多くの百貨店が閉店後に廃墟となってしまう中で、帯広・十勝では藤丸を未来につなげることができました。これからも皆様の力をお借りしながら、帯広の新しいシンボルとして再建を進めたい。元気で活気ある十勝の中心都市『帯広』を作り上げて、後世に残していきませんか」と米田社長は締めくくりました。

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