今回の主人公は「移住した友達に会いに来たら、ぼくも移住しちゃいました。それだけの魅力とポテンシャルを感じたからです」と話す長谷川貴彦さん。2022年12月、冬の時期に島根県から北海道中札内村に移住。出身は愛知県豊橋市。日本体育大学を中退して消防士となった経歴を持つ長谷川さんの現在の肩書きは「フォレストキーパー(森の番人)」。一体、どんな人なのでしょう。
プロフィール
長谷川 貴彦 | はせがわ たかひこ
1989年生まれ。愛知県豊橋市出身。日本体育学中退、豊橋市の消防士に。その後、養豚業、みかん農家などを経て、2018年島根県出雲市でアウトドアブランドに従事。そこでアウトドアギアの奥深さに触れる。個人でもアウトドアブランドを展開。2022年11月十勝中札内村に移住。株式会社そらが運営するグランピングリゾート「フェーリエンドルフ」でフォレストキーパー(森の番人)。
フォレストキーパー(森の番人)長谷川さんとは?
「高校時代の同級生から『一度、遊びにこいよ』と言われても、最初は寒いから嫌だと断っていたんです。そのうち、何度も誘われるので来たのが昨年です。その際に泊まったコテージで今の住居になっています」と移住のきっかけを話す長谷川さんの肩書きは「森の番人(フォレストキーパー)」。
フォレストキーパーとは、一体どんな仕事なのでしょう。
長谷川さんはこう話します。
「ぼくも模索中です。森の中に住み、森と会話をしながら気づいたことを改善していっています。とにかく全て勉強中です」
ちなみに、友達に誘われ遊びに来て、宿泊して、そのまま住居にしてしまった場所とは、とかち帯広空港から車で15分。美しいパッチワーク模様がどこまでも続く十勝平野の中に広がる森の中にあるグランピングリゾート「フェーリエンドルフ」です。
移住を決断した理由について、長谷川さんは「宿泊した瞬間に『住んでみたいな』と直感的に決めました」と語る理由には、過去の経歴も関係します。
愛知県豊橋市出身の長谷川さんは日本体育大学を中退後、いったんは地元豊橋市の消防士となります。その後、7年間の消防士経験を捨てて放浪の旅へ。そして、全国を周り、色々な職業を経験した後にたどり着いたが、島根県のアウトドアブランドでした。そこで長谷川さんの持ち前の好奇心が花開きます。
「アウトドアギアって価格も千差万別なんですが、とにかく奥が深いんです。気候や場所、使い方も含めて、知れば知るほど、どんどん好きになって知りたいと思っちゃうんです。そうして、止まらない探究心が功を奏したのか、ギアの良さを伝えることで売れ行きはどんどん高まりました。好きだから好きなギアをきちんと使ってもらいたいという思いが伝わった証拠ですね。まさに愛だと思うんです」(長谷川さん)
溢れるアウトドア愛を抑えきれない長谷川さん。そんな中で、同級生に誘われたのがアウトドアの聖地「十勝・中札内村」のグランピングリゾートです。「キャンパーの夢でもある北海道の聖地ですから、興味がそそらないわけありませんよ」。
止まらないヴィンテージ愛が森の番人を誕生させました
実は、長谷川さんが地方移住を決めた理由は、もう一つありました。
「信号機が少ないことです。アメリカが大好きでまっすぐな道路を気持ちよく走れる環境に憧れていたんです。日本にはそんな場所はないと諦めていましたが、あったんです。それが中札内村でした」(長谷川さん)
中札内村へ移住した長谷川さんですが、肩書きはフォレストキーパー。改めて、一体どんな仕事をしているのでしょうか。
前述した通り、長谷川さんが住んでいる場所は、グランピングリゾート「フェーリエンドルフ」。
大平原のなかに森で囲まれた村(ヴィレッジ)がフェーリエンドルフです。
広さは、東京ドーム25個分。「フェーリエン」とはドイツ語で「休暇」を意味し、ドルフは「村」。つまり休暇をとるための村をモチーフとしたリゾートです。
テントサイトを抜けて森の中に入ると中世ヨーロッパの村(ヴィレッジ)が広がり、まさにヘンゼルとグレーテルの世界感です。
ここからは実際に住んでいるフォレストキーパー長谷川さんに解説をお願いしましょう。
「森の村のコテージ群は、ドイツの建築家ヴォルフガング・ヴォンディッシュが本国ドイツの北ヘッセンの民家をモデルにした一棟貸コテージです。一軒一軒は、実際に家族が住むことを想定して、カラマツの森の中にゆとりある間隔で建ち並びます。歴史あるドイツ様式のコテージは、100㎡の広々とした間取りで、全棟暖炉付き、こだわりの家具や食器が揃います。寝室には英国王室御用達のスランバーランド製のベッドをご用意。キッチン、シャワールームなど、水回りもしっかりと整備されていますよ。大きな窓から繋がるウッドデッキはBBQグリルなどを完備した完全プライベート空間のバーベキューテラスで、家族や知人らと、森の中のドイツ民家でたまの休暇を過ごしてはいかがでしょう」(長谷川さん)
みなさん、ヴィンテージコテージの良さが伝わったでしょうか。
長谷川さんは、前職でアメリカンカルチャーが好きになり、徹底的に勉強したことで販売に繋がったという成功体験を持ちます。
今回の商材は、ヨーロピアンカルチャーが色濃いフェーリエンドルフのコテージです。長谷川さんが「ヴィンテージ家具を見た瞬間に虜になり、それからひたすら勉強していますよ」と話す通り、本場ドイツの職人が作ったコテージに住むことで、ヴィンテージの意味でもある『古くて価値のあるもの』を、身をもって体感しつつ、素材や歴史をしっかりと勉強したからこそ良さが伝えられるそう。
森の番人の周りには、自然と仲間たちが集います
移住して3ヶ月。今やフェーリエンドルフに働く仲間の中でも、コテージの建築手法、家具の素材、製法などについての知見はトップレベル。インタビュー中も話題はすぐに家具の話に移ります。
「ヴィンテージ家具は経年変化が楽しめるのも魅力の一つです。使い込むほどに木肌が艶やかに美しく変化していくため、細かい傷やシミ、角の丸みなどさまざまな表情を楽しんでもらいたいです」(長谷川さん)
まさに本物のドイツを体験・体感できるのが、フェーリエンドルフの誇るヴィンテージコテージ群なのでしょう。
森に住みながら良さを味わい、しっかりと顧客に伝える伝道師。それが長谷川さんの肩書きフォレストキーパーなのでしょうか。
「正直、ぼくにもわかりませんが、顧客だけじゃなく、一緒に働いている仲間にも伝えていくのが仕事だと思っています。前職でアウトドアギアを愛していたからこそ、良さを引き出し、伝える術を得ました。今はここが大好きです。そして同じくらい大好きな仲間に伝え、一緒に盛り上げていくのが私の役目だと思っています」(長谷川さん)
そんな長谷川さんのコテージには、多くの仲間が集まるそう。
「清掃担当、フロント担当など様々なメンバーが集まり、一緒に語り合っていますよ。暖炉の火を囲みながら語る言葉の実効性は高いんです。ウッドデッキでBBQをしながら森を見ていると自然と『あそこの街灯がずれている』や『枝を少し切って、見晴らしをよくしたらお客さん喜ぶよね』など、気づきや新しい企画がどんどん出てくるんです。しかも全てはすぐに実行できることばかりです」(長谷川さん)
これこそがフォレストキーパーの真骨頂なのでしょう。
当初、インタビューでは十勝・中札内村の良さを聞こうと思っていましたが、フェーリエンドルフに住んでいる長谷川さんにとっては、ヴィンテージコテージ群が住んでいる場所。当たり前ですが、『移住していかがですか』との質問に対しては「最高ですよ。大好きなヴィンテージ家具に囲まれ、ヴィンテージコテージの森に住み、アウトドアを常に感じながら仲間たちと共有できる喜びはひとしおです」との答えでした。
グランピングリゾート「フェーリエンドルフ」には、施設を魅力を最大限に引き出す森の番人「長谷川貴彦」がいました。